キール編 黒の組織考察

ど、どうしたんだね?‐赤井秀一の偽装死・指紋のトリックについて‐

こんにちは、鳥子です。

今回は、赤と黒のクラッシュで行われた赤井秀一の偽装死、特に指紋のトリックについてメモを書こうと思います。

今回は考察というよりまとめとなります。名探偵コナン85巻までの話になります。

 

偽装死までの全体の流れ

まずは赤と黒のクラッシュまでの大まかな流れです。

ブラックインパクト、48-49巻

黒の組織が土門康輝の暗殺を計画するが、コナンとFBIにより阻止される。この事件で、組織の一員であるキール(本堂瑛海:CIAからのスパイ)がFBIに追われた際に事故に遭い意識不明に、杯戸中央病院にてFBIの監視下に置かれる。

黒の組織の影、53-54巻

FBIの監視下に置かれているキールを黒の組織が捜索するも見つからず。ジンは何か当てがあるようだが…。また、ジンの話からキールがあの方に一目置かれていることが判明する。

黒い写真の行方、56巻

コナンと平次が本堂瑛祐の父親や水無怜奈の情報を入手する。

赤と黒のクラッシュ、56-59巻

黒の組織の一員が杯戸中央病院に潜伏していることを知ったコナンとFBI。追跡するも拳銃で自殺されてしまい、黒の組織にキールをかくまっていた病院がバレてしまう。コナンと赤井秀一が結託し、キールを黒の組織に再度潜入させるため、組織にわざと奪還させることに成功した。しかし、キールを信頼するために、あの方及びジンから赤井の抹殺を指示される。来葉峠にてキールの発砲により組織にとって脅威となる赤井の殺害が成功した…はずだった。

緋色の帰還、84-85巻

赤と黒のクラッシュの真相が明かされる。

 

今回は、(基本的には85巻の緋色の帰還で真相がわかりますが)赤と黒のクラッシュの話について見ていきます。

 

偽装死の目的

「赤と黒のクラッシュ」は、「ブラックインパクト」でのキール(CIAからのスパイ)の事故により、意識不明のキールを監視下に置いていたFBIでしたが、コナンと赤井秀一が独自に作戦を立て、キールを捜索していた黒の組織にわざとキールを奪還させた(再度潜入させた)という話になります。コナンと赤井秀一は、キールをスムーズに奪還させたことにより、組織がキールを疑うところまでも想定し、キールが組織にうまく潜入できるよう信頼を取り戻させる必要がありました。そのため、キールに赤井秀一を殺害させる計画も想定して、そこで赤井秀一の偽装死を実行しました。

 

赤と黒のクラッシュの内容

赤と黒のクラッシュはかなりの長編で、以下のような話が収録されています。

背景がピンクになっているところは指紋に関する描写がされている話であり、以降の章「指紋の照合」で詳しく触れます。

赤と黒のクラッシュ
56巻FILE.10 間違い電話!? 説明省略
56巻FILE.11 血が語る真実 説明省略
57巻FILE.1 母の遺品 説明省略
57巻FILE.2 死を呼ぶ片手袋 説明省略
57巻FILE.3 黄泉からの殺人者 説明省略
57巻FILE.4 悲しみの手袋 説明省略
57巻FILE.9 鴉の唄 本堂瑛祐が杯戸中央病院で父の仲間を見つける。
57巻FILE.10 2本目の糸 コナンとFBIは組織の人間が杯戸中央病院に潜入していると考える。
57巻FILE.11 偽りの患者 コナンは入院していた人物から話を聞く。(西谷さん:携帯を拾う。楠田陸道:携帯を拾う。新木さん:携帯を拾わず。)
58巻FILE.1 追跡、そして… 病院に潜入していた組織の人間が楠田陸道だと判明する。楠田陸道を追跡するが拳銃自殺される。
58巻FILE.2 赤井の過去 コナンが赤井秀一の過去を知る。
58巻FILE.3 イチかバチか… コナンが赤井秀一にある作戦を持ち掛け、実行に移す(★)。赤井秀一が缶コーヒーを落とす。組織がテロのような行動を仕掛けてくる
58巻FILE.4 擬装 組織から送られた爆弾をキャメルが処理。水無怜奈(キール)の映像が病院に流れる。
58巻FILE.5 最終手段 FBIは組織からの仕掛けに対し、キールを移動させる手段に出る。キールの脱出に博士を呼ぼうとするコナンを赤井秀一が阻止する。この時、赤井秀一はコナンの携帯に右手で触る。
58巻FILE.6 任務 コナンと赤井秀一とキャメルは、キールをわざと組織に奪還させることに成功する。
58巻FILE.7 姉弟 ★の内容が一部分(キールを奪還させるための作戦)明らかになる。
58巻FILE.8 意外な容疑者 組織はキールが簡単に奪還できたことにまだ何か裏があるのではないかと考える。
58巻FILE.9 13日の金曜日 ジンがキールに赤井秀一を殺害するように指示する。
58巻FILE.10 キャメルの過去 キール、ジンに銃で脅されながら赤井秀一に電話する。その後メールにて赤井秀一に落ち合う場所を指示する。ジェイムズ、赤井秀一の指のコーティングに気付く。コナン、ジョディに携帯を貸す。
58巻FILE.11 魔法の呪文 赤井秀一、楠田陸道の遺体を車に乗せ来葉峠に向かう。キール、赤井秀一の肺を撃つ。
59巻FILE.1 鋼の楔 キール、ジンの命令に従い赤井秀一の頭を打つ。楠田陸道の遺体を赤井秀一とすり替える。楠田陸道の遺体の右手をポケットに突っ込ませ、車を爆破・炎上する。来葉峠の事件がニュースになり、FBIに知れ渡る。ジョディ、警視庁にコナンから借りた携帯を持っていき、赤井の指紋と遺体の指紋を照合する。FBI、組織が赤井秀一の死を知る。

 

偽装死の構成

赤井秀一の偽装死は以下3点のトリックが使われています。次項で指紋の照合について見ていきます。

射撃の偽装

空砲と血糊を利用する。

キールが赤井秀一の頭を撃つことで射殺しようとするが、その過程でキールが赤井秀一に向けて空砲を撃つ。

赤井秀一はタイミングを合わせてニット帽から血糊を噴き出させる。実際には赤井秀一は死亡していない。

遺体のすり替え

赤井秀一が、あらかじめ車に乗せていた楠田陸道の遺体とすり替わる。

キールが爆弾を使って車に横たわった遺体ごと爆破・炎上させる。

この時、遺体の右手の指紋が採取できるように耐火性のズボンのポケットに右手を入れておく。

指紋の照合

他者に本当に死亡したと思わせるための技。

「遺体のすり替え」によってすり替えた楠田陸道の遺体の右手の指紋とコナンの携帯に付着した楠田陸道の(右手の)指紋を照合する。

これだけだと楠田陸道の指紋を照合しただけになるが、赤井秀一がコナンの携帯に触っていたと思い出させ、楠田陸道が触っていたことを思い出させないことで遺体が赤井秀一だと思わせることができる。

 

指紋の照合

続いて指紋の照合トリックの流れを記載していきます。

 

57FILE.11 偽りの患者

コナンが黒の組織の人間が誰なのか炙り出すため、西矢忠吾、楠田陸道、新木張太郎の順に接触して話を聞きました。

  • 西矢忠吾は、腰痛で入院していました。コナンが落とした携帯を触った後、脂性により携帯がベタついたため、携帯を拭き取りました。指紋もこの時に拭われたと考えられます。
  • 楠田陸道は、キール捜索のために潜入していた組織の人物です。首を痛めて入院していましたが、すでに治っていました。コナンが落とした携帯に触れたため、指紋が付着しました
  • 新木張太郎:コナンが落とした携帯を拾ってもらおうとしましたが、新木さんはペースメーカーを埋め込んでおり、携帯に触れなかったため指紋はつきませんでした

つまり、コナンが3人に話して、楠田陸道が組織の人間だと炙り出した段階で、コナンの携帯に付着していた指紋は楠田陸道の指紋のみとなることがわかります。

以下の赤と灰色はコナンの携帯をざっくりと表現しています。

58FILE.3 イチかバチか

コナンが、赤井秀一にとある作戦を持ち掛けます。赤井秀一が左手に持った缶コーヒーを落としたことから、この時には、赤井秀一の両手の指先にコーティングが施されていたことになります。

58FILE.5 最終手段

組織の目を欺くため、コナンが博士の車にキールを乗せようとしましたが、赤井秀一がコナンから携帯を奪い阻止します。この時、赤井秀一は携帯を右手で触りました。

FBIの目線からすれば、赤井秀一の右手の指紋がコナンの携帯についていると考えられますが、実際には指にコーティングをしていたため、赤井秀一の指紋はつきませんでした

つまり、この段階でコナンの携帯に付着している指紋はやはり楠田陸道の指紋のみとなります。

58FILE.10 キャメルの過去

キールが赤井秀一を呼び出すために電話をかけた後、ジェイムズが赤井秀一の指のコーティングに気付きます。

59FILE.1 鋼の楔

来葉峠にて赤井秀一がキールに射殺されます。この時、「射撃の偽装」と「遺体のすり替え」によって、赤井秀一は偽装死を行います。

そして来葉峠の事件がニュースになり、FBI内で赤井秀一が事故に巻き込まれたのではないかと話があがります。

遺体の右手は残っていたという事で、以前赤井秀一がコナンの携帯を右手で触っていたことを思い出したジョディは、遺体が赤井秀一かどうか確認するために警視庁に赴きます。そして、来葉峠の遺体の右手の指紋とコナンの携帯の指紋を照合してもらいます。

その結果、「遺体の右手の指紋」と「赤井が触れたコナンの携帯の指紋」が一致したことから、FBIは「遺体は赤井秀一だった」と結論付けます

しかし、そもそも赤井秀一の指はコーティングしてあり、実際には指紋はついていませんでした。コナンや赤井秀一、ジェイムズ目線では、「遺体は楠田陸道」であり、「遺体の右手の指紋」と「楠田の触れたコナンの携帯の指紋」が一致した、つまり楠田陸道の遺体の指紋照合を行っただけとなります。

 

ということで、赤井秀一の偽装死・特に「指紋の照合」の流れを見ていきました。

赤と黒のクラッシュから緋色の帰還での赤井秀一復活は、長編の中に静かに、そして実に細かく伏線が張られていて、見事な描写・展開だと思います。

回収されて真相を知ったときはとても感動しました!そして、何度振り返っても素晴らしい…。

 

また、メモを読んでいただければと思います。

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