こんにちは、鳥子です。
今回の記事では、シャロンとクリスの別人説番外編、演出編と題して、本当にシャロンとクリスは同一人物なのか?ということを2つの演出の観点から考えたいと思います。メタ的な見方をしますがご了承ください。
演出1:蘭の気付き
まず、演出の1つ目として触れたいのが、蘭の気付きです。
蘭は90巻の裏切りのステージで、梓さんに変装している人物が、42巻の二元ミステリーで自分に「どいてエンジェル」と言ってきた人物と同じであることに気付きます。しかし、蘭はこのとき、灰原を庇うためにトランクから飛び出し、そのまま灰原に飛びついたため、ベルモットの顔を見れていません。
なぜこのように、蘭はベルモットの素顔を見ないように描かれているのでしょうか?
蘭はニューヨーク編でシャロンの顔を見ていますが、ベルモットの素顔を見た時にシャロンと同一人物だとは判断しない可能性があるのではないか?と考えました。
そのため「あえて蘭にはベルモットの素顔は見せていない」といった演出をしているのかもしれません。
演出2:コナンとFBIのベルモットに対する認識
次に2つ目、コナンとFBIのベルモットに対する認識です。ここから長い話になります。
42巻の二元ミステリーでは、ジョディー捜査官が灰原に変装したコナンを車で連れ出し、埠頭で新出先生に変装したベルモットと対峙します。
この時の会話で「あなた、どうして年をとらないの?」とジョディー捜査官はベルモットに聞きますが、この会話の中である演出がありました。
それは次のようなイメージです。
ベルモット「あらあら、物騒なもの持ってるじゃない?」「日本警察の許可はとったの?」
ジョディ「こっちの警察との合同捜査は、あなたの身柄を確保した後で要請するわ!」「もちろん、処分は受けるつもり」「その前に、どうしてもあなたに聞いておきたいことがあるのよ」
ベルモット「あら、何かしら?」
ジョディ「あなた…どうして…」
(ゴォォォォォォォォォォォ)
「どうして年をとらないの?」
ジョディ捜査官がベルモットに「どうして年をとらないのか」と質問した際に、飛行機が轟音とともに上空を通過しています。
この演出の意味合いは、何が考えられるでしょうか?
私は「車内にいるコナンにベルモットが年をとっていないという話を聞かせないようにしている演出」だと考えました。
もちろん、ベルモットもジョディも飛行機が通過する時間まで読んでいるわけではないので、コナンにとってはベルモットが年をとっていないという話が偶然聞こえなくなる形になるわけです。その後も、ベルモットが赤井秀一に散弾銃で撃たれた際、赤井秀一はジョディに向かって
赤井「それより見ろ!散弾で裂けたやつの顔を」「やはりあれが、あの女の変装なしの素顔ってわけだ」
と会話します。
実はこの少し前、コナンは撃とうとした麻酔銃をベルモットにひっくり返され、そのまま麻酔針がコナン自身に当たり、眠ってしまいました。
当然、その後の赤井秀一の会話も聞いていません。ただし、森の中の車内ではコナンはベルモットの顔を間近に見ているため、この時には顔の傷からベルモットがこれ以上変装していないことに気付ける状況にあることがわかります。ただし、車内の緊迫した状況でコナンがそこまで考えが及んでいるかはわかりません。
コナンの推理
今述べたようにコナンは二元ミステリーにおいて、ベルモットの2つの重要な要素である「不老に関すること」と「素顔」の情報を手に入れられなかったと考えています。不老に関する話は得られませんでしたが、コナンはベルモットと対峙する前から、シャロンとクリスが同一人物であることを推理していました。
この同一人物という結果はFBIと同じ考えですが、コナンがそう推理した理由はFBIがたどり着いた理由、つまりFBIが調べた指紋の一致とは異なります。
二元ミステリー冒頭では、コナンはベルモットから、工藤新一宛の招待状と封筒を受け取ります。しかし、その封筒に同封されていた手紙には、コナン宛の手紙であることが記されていたため、ベルモットに正体を見抜かれていることを知ります。そして、おそらくシェリーが灰原の姿になっていることもバレていると勘付きます。ベルモットは、招待状によってコナンを季節外れのハロウィンパーティーに誘い出しましたが、実際の狙いは灰原の方だと読んだコナンは灰原に変装することにします。
しかし、そもそも2人の正体がバレているのに、なぜ襲ってこないのか博士は疑問に思います。
コナンは有希子に灰原に変装させてもらっている際に、ベルモットが灰原を殺害するためにコナンを遠ざけようとしている理由について語っています。
コナン「ベルモットってやつが灰原を殺すために俺を遠ざける理由で考えられるのは、奴の正体が女優のクリス・ヴィンヤードで、しかもシャロンと同一人物だった場合だ」「多分変装で二役をやってるんだろうけど、母さんの知り合いならガキの頃の俺をアルバムとかで見てるだろうから、俺の正体を見抜くのはわけないし、事件に巻き込みたくないのもわからなくはねーからな」
つまり、コナンはFBIとは異なり、シャロンが有希子と友人関係であることからシャロンの行動理由について推理し、同一人物だと考えていました。
コナンは、シャロンとクリスが同一人物で二役をやっているのだろうと考えたものの、不老かもしれないという情報を得ていません。そのため、コナンにとって、シャロンとクリスの二役は、次のようにしか考えつかないことがわかります。
- 20年前にジョディー父を殺害したシャロンが19年ほど経った頃、老化によって1年前にニューヨークで会った容姿のシャロンの姿になっている
- 若作りメイクによってクリスの容姿になることでシャロンとクリスの二役を演じてきていたが、シャロンの偽装死を行うことで娘のクリスのみを演じることになった
ということが考えられるはずです。
そして、コナンは、シャロンの葬儀、つまりシャロンの偽装死以降も老けメイクではなく、若作りのためのメイクをしていると考えたはずです。
老けメイク?
しかし、気になるのは、78巻のミステリートレインでの有希子とベルモットの会話です。
有希子「でも残念だわ」「年をくっても輝き続けるメイクの仕方をいつか教わろうと思ってたのに、それがあなたの素顔?」「大女優シャロン・ヴィンヤードは、ただの老けメイクだったなんて…」
と有希子が発言しています。
老けメイクについては不老を知ったコナンが伝えたのではないか?と思う方もいるかもしれませんが、シャロンが老けメイクというのはシャロンが不老だと知っていないと出てこない考えになります。少なくとも二元ミステリー終了時点では、不老のことは知らないですし、FBIとの接点もそこまでなくベルモットが不老だという情報を伝えてくれるほどの仲ではありませんでした。
つまり、コナンが有希子に「シャロンは老けメイクである」と教えたのでは?という点は、二元ミステリーからミステリートレインまでのコナンとFBIの関係や描写から(判断が難しいですが)可能性は低いと考えています。
考えられる最もシンプルな答えとしては、「赤井秀一が沖矢昴として生活するために有希子が変装の世話をしてくれた際、有希子は赤井秀一からシャロンについて聞いていた」というのが最もシンプルだと考えています。
つまり、私は、ミステリートレイン時点でも、コナンはベルモットの不老を知らないと考えています。
盗聴は?
あれ?でも…ミステリートレインでの有希子とベルモットの会話って、コナンは盗聴していたんじゃなかったっけ?
ミステリートレインで盗聴していたのであれば、ベルモットが老けメイクでシャロンとして生活していた、つまり、年をとってないことを知ったのでは?と考える方もいると思います。しかし、細かく見てみると、有希子とベルモットがこの老けメイクの会話をしているとき、コナンは眠りの小五郎の推理ショー中でした。
また、コナンがベルモットと有希子の会話を盗聴しているシーンでは、コナンは左耳にイヤホンをつけて右手にスマホを持って有希子と会話しています。盗聴にはイヤホンが必要だと考えられますが、眠りの小五郎の推理ショー中にはイヤホンはしていません。つまり、コナンはミステリートレイン時点で、有希子の老けメイクの発言を聞いていません。
もちろん、有希子からコナンにベルモットが不老かもしれないことが伝えられている可能性もあり、それを読者は知らないだけ、つまり描かれていないだけということもあるかもしれませんが、2回もコナンが重要なベルモットの情報に気付かない演出をしていることから、本当にコナンはベルモットが不老かもしれないことを知らないのだと考えています。
長々と語りましたが、これが2つ目の演出です。
「コナンには一切、ベルモットが不老だと考えられるシーンに触れさせていない」ということです。
なぜ このような演出がされているのか?
いくつか考えられるとは思いますが
1.
1つ目は、ベルモットの不老も同一人物も確定事項であり、コナンに与えられるテーマがAPTX4869の解読およびベルモットの不老にたどり着くことです。薬についてコナンが紐解くことで、ベルモットの不老にたどり着き、同一人物としての真相を知るためです。つまり、「コナン全体の謎となっているAPTX4869」と「ベルモットと薬との関係」を紐解くために、あえてまだ不老の話はコナンに聞かせていない演出ということです。
2.
そして、2つ目はベルモットが不老で、かつ同一人物だというのは読者へのミスリードであり、何かのきっかけでコナンがクリスとシャロンが別人であることに気付くための演出です。つまり、本当は別人だけどベルモットが不老だという情報をコナンが得ることで、コナンの視点がFBIと同じ視点になり、シャロンとクリスが別人という真相を考える手掛かりが消えてしまうために、不老の話は聞かせていないといったことが考えられます。
同じ意味ですが…シャロンとクリスが本当は不老でも同一人物でもないのに、現在コナンは同一人物だと考えている、そこで今度はコナンが「不老かつ同一人物」と考えてしまうと、二度と真相にたどり着けずハマってしまうといったイメージです。
演出・描かれ方の話なのでメタ的な考え方ですが、ご了承ください。
ちなみに私は、シャロンとクリスが別人だと考えていて、かつ、不老ではないと考えていますので、後者の方を推しています。
また、メモを読んでいただければと思います。