
こんにちは、鳥子です。
注意
こちらはサンデーの内容が含まれる記事ですので単行本派、アニメ派の方はご注意ください。
前回の記事はこちら
謎が繋がるフサエ・ブランド‐若狭留美の知人&組織のラボの所在とは?FILE1163考察ー
目次
事件の概要
舞台はフサエ・ブランド米花店。
5人組の強盗団が狙うのは、資産家が午後4時頃に受け取りに来る予定の宝石でデコられた総額1億円相当の革製ゴーグル。
阿笠博士・少年探偵団・本物の店員たちは、ドアノブの外れた倉庫に監禁されています。
手口
コナンは店員への聞き込みから、乗っ取りの手口を再構成します。
犯人は1人を店員になりすませて潜入させ、本物の店員を「店の奥で妙な音がする」と倉庫へおびき寄せてスタンガンで気絶させ、制服を奪って拘束。
倉庫のノブはもともと店員が備品棚をぶつけて壊しており、内側から開けられない=監禁に最適な部屋でした。
なりすまし犯は人質のフリをしつつ、スマホを通話状態にして外の仲間に状況を中継する監視役を務めていた——これが前話の「内通者」の正体です。
コナンの反撃
拘束されたフリを続けながら、コナンは買い物袋の中身でいたずらの道具を量産します。
ストロー・輪ゴム・爪楊枝で作る、飛び出すと虫のように見えるバネ仕掛けと、それを仕込んだ弁当箱の「びっくり箱」。
紙パックの飛び出し仕掛け。内開きのドアの足元に貼るトリップワイヤー(粘着テープ)。
いずれも「ネットで見たいたずら」の武器転用です。
さらにコナンはメガネのツルでラッチボルトを操作し、倉庫の鍵を開けてしまう。
灰原は奪ったスマホのマイク部分を押さえ、外の仲間に作戦を聞かれないようにしつつ、「後、3分もない」と時間を計ります。
若狭が見抜いた本当の脅威
コナンの武器は心許なく、腕時計型麻酔銃の針は使用済み、サッカーボールは一発で2人まで、花火ボールは死の危険と火事のリスクがありました。
頼みの綱は元・凄腕ボディーガードの若狭留美です。
ここで若狭の冷徹な内心が描かれます。
彼女はコナンを「頭は切れるようだけど…詰めが甘い」と評し、コナンが見落としているかもしれない本当の脅威を見抜いていました。
リーダー格の眼鏡の男が懐に忍ばせているのは、クレジットカード大の折り畳み拳銃「ライフカード22WMR」。
中央部を開けば.22口径の拳銃に変形する殺傷力の高い武器で、しかも1つとは限らない——。
命懸けのイタズラゲーム開幕
若狭の作戦は冷酷です。いたずらの仕掛けを目眩ましにし、血を見て動揺した隙に5人を制圧する。
「2、3人撃たれて死ぬかもしれないけど…問題はない」と言い切り、その理由を「私は…こんな所で命を落としている場合ではない」と独白しました。
彼女には、ここで倒れるわけにはいかない目的があるのです。
「じゃあ始めましょうか…命懸けのイタズラゲームを…」。
と不敵に微笑みます。
その瞬間、灰原が若狭の腕をギュッとつかみ、絞り出します。
「ダメよ…先生…」「そっちに行っちゃ…」「ダメ!!!」
とここで今回は終わりました。
若狭留美と灰原哀の関係
なぜ灰原は、ここまで強く若狭に反応するのでしょうか。
この関係は、どう若狭を味方と判定し、観察してきたかと
なぜ失いたくないのかの二段階で捉えると整理できると考えています。
灰原は若狭が好き
大前提として、灰原は以前から若狭先生を好きだと口にしています。
一方で、危険な気配に反応する灰原センサーは若狭にも反応したことがありました。
警戒と好意が同居している状況で、この矛盾が二人の関係の核心となる部分です。
灰原はどうやって若狭に気づき、注視し始めたか
灰原センサーの反応
若狭の登場回を振り返ると、灰原の反応が途中で一変します。
- 91巻 初登場(強盗3人を単独制圧)→ 灰原は気に留めていない
- 92巻「白い手の女」 → 同じく無反応
- 93巻「燃えるテントの怪」(キャンプ回・3回目) → ここで一変
キャンプ回で灰原は
- 義眼・失明の話題に若狭が殺気で反応したことを感知(センサー発動)
- 若狭の右目が見えていないことを把握
- 若狭が義眼の黒田を睨みつけた。
これを目撃した上で、ラストで「好きだから若狭先生」と口にします。
仮説:灰原は2つの情報を持っていた?
キャンプ回で灰原の中の何かが照合されたのではないでしょうか。
灰原が事前に持っていた情報を、こう仮定します。
- 情報①:ラムは義眼である
- 情報②:(名前は不明だが)組織絡みのある人物の右目が見えない
情報①は組織の内情に通じる灰原なら持ちうる情報で、すでにコナンにも共有済みです。
情報②が今回の仮説になります。そして情報の出どころも考えてみます。
情報②の伝達経路——エレーナから直接ではあり得ない
情報②の源は浅香と接点があったであろう母・宮野エレーナに行き着きたくなりますが、エレーナと宮野志保(灰原)には直接の接点がありません。
エレーナは志保が誕生して早い頃に亡くなっているためです。したがって経路は次のどちらか。
- 経路A:エレーナと会話したことのあるラボメンバー経由。
エレーナが研究施設で接した人物が「右目の見えないある人物」の話を持っていて、それが灰原に伝わった。 - 経路B:宮野明美経由。
エレーナから話を聞いていた姉・明美が、妹に伝えていた。姉妹の縁を考えれば自然ではある。
灰原は名前は知らないものの「右目が見えていないある人物」の情報を知っていたのではないでしょうか。
ただし、黒内障とまでわかっているかは不明です。
キャンプ回で起きた照合
情報②を持つ灰原が、キャンプ回で若狭を見て何を思ったか。
1. 義眼の話題に若狭が殺気で反応 → 情報①組織、特にラムに関わる者だと感知
2. 若狭の右目が見えないと判明 → 情報②「あの右目が見えない人物かも」と照合
3. 若狭が義眼の黒田を睨む → 敵意がラム(義眼)側に向いていると確認
ここで効くのが「義眼」と「黒内障」です。
黒内障は眼球の外見は正常なのに視力を失うタイプ。
医学知識の豊富な灰原なら、右目の見え方から「これは義眼ではない失明だ」と見抜けるはずです。
だから灰原は若狭を「ラム(義眼)=敵」ではなく「情報②の人物=ラムを狙う側」だと認識したのではないでしょうか。
その結果、若狭は「警戒すべき敵」ではなく「あの人物かもしれない、確かめたい相手」になり、注目し始めたのだと思います。
灰原は若狭=浅香だと気づいているのか
「灰原が若狭=浅香だと気づいた」という描写は、まだありません。
灰原が照合したのは「黒内障、あるいは右目が見えていないある人物」までと考えています。
浅香という名前や17年前の羽田事件と結びつけた場面はありません。
一方、若狭は灰原=宮野志保だとかなり強く疑っている現状です。
なぜ灰原は若狭を失いたくないのか
明美に重ねた
灰原は過去にも行っちゃだめと発言した場面があります。
42巻「満月の夜の二元ミステリー」で蘭に庇われて以降その献身に明美を重ね、
49巻「ブラックインパクト!」では外へ出ようとする蘭を明美を重ねて必死に引き止め
78巻「ミステリートレイン」でも蘭の裾を掴んで不安を紛らわせました。
「献身的な女性が危険に飛び込む → 明美を重ねて止める」この描写を前提におくと
子どもたちのために前へ出ようとする若狭は、この型にぴたりとはまり、灰原の中で若狭に明美を重ねている可能性が考えられます。
母・エレーナの残響
さらにその奥には母エレーナの影もあるかもしれません。
灰原センサーが若狭に感じたのは元組織員・沖矢(赤井)に似た組織の世界の匂いでした。
母エレーナも組織にいた人。灰原は物心ついている時に、エレーナと直接会っているわけではないのでエレーナの記憶はないかもしれませんが、若狭から感じる「同じ匂い」の正体が、母と同じ匂いだった可能性があります。
自身に重ねた
姉・明美、母・エレーナと来て、もう一つ見逃せない重ね合わせがあります。
家族を失ったもの同士、灰原が若狭に「もう一人の自分」を見ているというパターンです。
二人の境遇は、驚くほど共通点があります。
灰原は両親と姉・明美を、いずれも黒の組織に奪われた。
若狭もまた、17年前に大切なアマンダと羽田浩司を組織に奪われている。
どちらも「組織に家族(に等しい人)を奪われた生き残り」であり
どちらも仮面をかぶって正体を隠して生き(灰原は子どもの姿、若狭はドジな副担任)
どちらも組織に追われていました(灰原は裏切り者として、若狭は現在もラムに追われています)。
灰原が若狭を見るとき、そこに自分自身の人生が映るのは自然なことで、これは明美やエレーナのような面影の重ね合わせだけではなく、同じ運命を歩む者として共感しているのではないでしょうか。
若狭の「こんな所で死ぬわけにはいかない」という、目的のためなら他人の死も厭わない冷たい覚悟が見えましたが
それはかつてシェリーとして組織に取り込まれ、のちに絶望の淵に立った過去の灰原自身の姿でもあるのかもしれません。
灰原は、組織の力に呑まれていく感覚を誰よりも知っています。だからこそ、若狭を止める「ダメ!!!」には
「私と同じように呑まれないで。命も人としての自分も投げ捨てないで。あなたの気持ちが分かるから。私も、そこにいたから」という気持ちがあるのかもしれません。
「そっち」とは何か——復讐の道と、灰原自身の影
灰原のセリフをもう一度見ます。
「ダメよ…先生…」「そっちに行っちゃ…」「ダメ!!!」。
この「そっち」が何を指すかが、上記で考えた「灰原が誰を若狭に重ねているのか」を判断するのに重要ですね。
地獄に堕ちる天使の如く
若狭を動かしているのは、17年前にアマンダと羽田を奪われた組織への復讐です。
「私はこんな所で死ぬわけにはいかない」は、命を懸けてでも復讐を完遂するという宣言。
とすれば「そっち」は単なる死の危険ではなく、「復讐のために自分も他人も焼き尽くす道」を指す、と読めます。
ここで効いてくるのが、灰原自身です。
灰原=宮野志保もまた両親と姉・明美を組織に奪われ、人生を壊された人間。
もし灰原の中にも組織への復讐の想いがあったかもしれません。
そうなると若狭は「自分がこれから行くかもしれない道を、先に歩いている姿」になります。
「そっちに行っちゃダメ」は、若狭への静止であると同時に、灰原自身への戒めにもなる。
この一言で、灰原は自分の中の復讐心を若狭という鏡に映して押し留めているのかもしれません。
劇場版名探偵コナン黒鉄の魚影では、留学時代に接点のあった現在はエンジニアである直美アルジェントに対し
「私は変われた、だから信じて」と発言していました。
組織での過去にとらわれず強く生きていくことを示唆し、それを直美に諭すセリフです。
原作でもこの流れを再現するのかもしれません。
というよりは、原作でやることを先行して劇場版で魅せたの方が近いのかもしれません。
なぜ灰原だけが異変を察知し、行動できたのか
1164話のラスト、若狭を止めたのは灰原だけでした。
「2、3人死んでも問題ない」と殺気が最高潮の若狭に、灰原センサーが反応した可能性は高く、「ドックン」の明示はないため、ここは推測になりますが、おそらく、若狭の気配が実際に変わったと考えられます。
若狭を注視してきた灰原がこれを見逃すはずがありません。
つまり灰原は、殺気を感知する体質+若狭を注視してきた観察眼+若狭への強い思いをすべて併せ持つ唯一の人物であるため
コナンや小林先生が気づけない段階で、ただ一人、若狭を物理的に止められたのです。
若狭の冷たい覚悟
今回見逃せないのが、若狭の冷徹さ。
「2、3人死んでも問題ない」と、目的のために他人の死すら厭わない覚悟を見せました。
だとすれば灰原の「ダメ!!!」には、若狭自身が撃たれかねない命の心配に加え、人を殺める線を越えさせたくない
復讐に身を焼く若狭に、自分を重ねて放っておけないといった思いが加わったのではないでしょうか。
灰原は、若狭の命だけでなく、その人としての在り方まで守ろうとしているのではと考えています。
「灰原の思い」とは
灰原の若狭への思いは2段階で説明してきました。
黒内障の人物と若狭を照合し、「ラムを狙う味方だ」と判定して注視してきた
献身する若狭に姉・明美を重ね、その奥で母エレーナの同じ匂いを無意識に感じ取っており、自分を鏡に映したような存在である。
この味方判定と家族の面影、自身の鏡写しが揃って初めて、あの命がけの「ダメ!!!」が生まれた。
そして、もし単に「姉を重ねただけ」なら灰原自身とっくに自覚しているはずで、わざわざ一話かけて明かすほどの謎になりません。
次号の主題になり得るということは、灰原本人もまだ言葉にできていない、もっと深い何かが絡んでいると考えています。
またメモを読んでいただければと思います。